加速度センサーは、ヒトやモノの運動の変化を捉える計測器としてさまざまな分野で活用されています。今回は、当社のヘテロコア型光ファイバーセンサーを応用した加速度センサーの開発・実証事例を解説していきます。

加速度センサーとは

ある物体が静止している状態から運動を始めるとき、あるいは慣性により動いている状態から運動に変化が生じるとき、その物体には加速度が働いています。逆を言えば、物体に働く加速度を計測することで、物体がどのように運動しているかを知ることができます。

加速度センサーは、例えばスポーツ科学からロボティクス、構造モニタリングまで幅広い分野で応用されています。特に機械や土木インフラの非破壊検査において、加速度センサーが捉える振動データを解析すると、構造物内部に生じた異常箇所や異常の発生原因を特定することが可能になります。センサーによる検査技術は、これまでに人の手により行われてきた膨大な数の土木インフラ・機械設備の点検をより効率的にすることができ、さらには測定した加速度(振動)データを蓄積し、従来の点検結果と照合することで、将来的にはデータに基づいた定量的な点検が可能になるかもしれません。

加速度データに基づく構造物の非破壊検査技術は、さまざまな分野で応用が期待されています

光ファイバー式加速度センサー「i-Line ACC」(仮称)の開発

当社には、これまでインフラの点検調査をしている企業様や送電設備を運営管理されているお客様から、
「橋梁の点検作業にセンサーを導入したい」
「送電設備や大型動力装置の状態異常をセンサーで測れないか?」

といった相談を何度かいただいております。当然のことながら、市販品の加速度計で事足りるケースもありますが、必ずしも安価な加速度センサーで全ての要求を応えられるはずはありません。特に、実際の現場で信頼性の高いデータを取得したい場合には、落雷・誘導雷に伴うサージ電流や周辺の電磁場ノイズ、寒暖差などによる外乱を受けない光ファイバーセンサーが最適です。

当社では、従来のセンサーにとっては過酷な環境(強電磁場、寒暖差、落雷)でも安心して使用できる加速度センサーを目指し、研究開発を進めています。

振り子型加速度センサー(~20Hz)【土木インフラ向き】

振り子型加速度センサー

例えば、全長30メートルの橋梁における固有振動数は、3~4Hz程度と言われています(橋梁の構成物・設計にもよります)。一般的にも大型構造物は数Hz以下の極めて低周波の振動を引き起こします。そこで弊社でも、揺れによる振り子の動きを光ファイバーセンサーで捉えるという”振り子型”加速度センサーを考案しました。センサーの性能は振り子の設計により決定され、試作時点では20Hz以下の低周波振動を測定できることを確認しました。

構造物の点検調査を行っている企業様のご協力で、高架橋の橋央部に加速度センサーを試験的に設置させていただき、大型車両が走行した際の床板部分の振動を測定しました。20t車両に高架橋上を走行させ、その時に測定されたデータを参照用の加速度計・変位計と比較したところ、車両走行時に揺れが生じたことが確認でき、橋梁の固有振動数と思われる周波数ピークも観測されました。このほかにも、当社では光ファイバー式変位センサーによる橋梁の変位計測などの導入実績もございます

橋梁のセンサ配置図
加速度センサーの測定結果

片持ち梁型加速度センサー(~1kHz)【機械振動計測向き】

振り子型のような20Hz以下の極低周波領域の振動計測は、大型構造物がもつ基本モードの固有振動には対応できます。しかし、タービンやモータといった動力装置は、数十~数百Hzといったある程度高い周波数帯で固有振動モードをもちます。更に装置内の異常箇所を特定するとなると、より高周波の固有振動モードを捉える必要があります。

そこで、当社のひずみセンサーを応用して、比較的高周波振動にも対応しうる片持ち梁型加速度センサーを考案しました。このセンサーの測定原理は加速度による慣性力でたわむ片持ち梁を内部に備え、梁のたわみをひずみセンサーで捉えるものですが、梁が小さいほど高周波振動を捉えることができるので、振り子型に比べてセンサー素子自体を格段に小さくすることができました(下図)。この試作段階では、センサー素子の構成部品に3Dプリンターで作成したUV樹脂を用いました。

片持ち梁型加速度センサー
振り子型・片持ち梁型の外観・内部構造比較

さいごに

今回は、これまでに当社で試作開発を進めてきた光ファイバー式加速度センサーに関する取り組みをご紹介しました。当社では加速度計に限らず、光ファイバーセンサーに関するカスタム開発も承っておりますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。