光ファイバー水位計による下水道管路内の水位情報モニタリング

コアシステムジャパンは、株式会社奥村組との共同研究開発の一環として、光ファイバー(ヘテロコア式)水位センサー「i-Line®-WL01」を下水道用にカスタマイズし、長期間のリモート水位計測を実現させた事例を紹介します。

システム概要

センサー構成

下水管路への水位計の設置・撤去を効率的に行うことを目的に、アンカーレスで着脱できる固定冶具を開発し、従来の設置時間が1時間程度であるのに対して、約1/4の15分程度にまで改善しました

また、下水管、特に汚水の場合には、流入物の堆積による管詰まりを引き起こさないことが重要です。そこで、水位センサーは厚さ2cm程度の最小単位のコアユニットを固定冶具に取り付け、下水管の流れを妨げいことに成功しました。さらに当社の光ファイバー(ヘテロコア式)水位センサーは、消費電力が常時計測で0.5W程度にまで低減化できており、一般的な電気式水位計の消費電力(8W程度)に比べても1/8程度であるため、格段の低消費電力計測を実現することができます。

水位センサーの固定冶具(参考文献1.より引用)

計測・通信の省電力化

下水道管路モニタリングで特に課題となっているのが、いかにマンホール下で計測したデータを地上に送るかです。特に金属製のマンホール蓋の下から電波を送る際に、通信電波は著しく減衰され、地上の周辺環境によって通信電波が取得できない場合があります。
また、システムを運用する上で、計測システムの電力はバッテリーからの供給で賄わなければなりません。しかし従来の計測・通信システムの電力消費では、長期間運用するためには鉛蓄電池などの大容量のバッテリーが必要となり、下水道管路内に機材を設置する事業者の負担が大きくなります。

そこで当社は、センサーから通信、クラウドネットワークの構築まで一気通貫して開発できる「ワンストップ・ソリューション」の強みを生かし、計測機能・通信機能の電力消費を最小限に抑えることに成功しました。計測機能と通信機能をワンボード化し、計測・通信時以外は電力消費を限りなく抑える「待機モード」を実装し、通信規格は消費電力が小さく安価に利用できるプライベートLoRaを導入しました。その結果、10分毎に計測・通信を行うという条件のもとで消費電力を3mWh以下にまで低減化し、バッテリー容量の大幅削減を達成しました。現場での実証試験では、市販の単三乾電池を使って屋外で半年以上の長期計測を実現しており、自社で構築したクラウドネットワークを経由して、事業者自身のスマホ・タブレットから水位データを閲覧することができます

屋外・オフィスからいつでも水位データにアクセス
下水道管路の計測試験で得た光ファイバー(ヘテロコア方式)水位センサーの知見

センサー設計の最適化により、現場での設置作業を簡略化・短縮化

光ファイバー(ヘテロコア方式)水位センサーは、従来式水位計の1/8倍程度の低電力消費。

計測~通信まで請け負える「ワンストップ・ソリューション」により消費電力を最小限化(3mWh以下)

参考文献・URL

  1. 「下水道管路内水位のモニタリング技術の開発」、『奥村組技術研究技報』2022年 No.48.
    https://www.okumuragumi.co.jp/technology/tri/annual_report/2022/